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コラムNo.033 飼い育てるという意味(その2)

コラムNo.033 飼い育てるという意味(その2)

前回、命に関わる状況に陥る危険性があるとお話しましたが、具体的にどのようなことがあるのかを例をあげてみましょう。
1) 単身者の飼育に多い例:結婚や出産などを機に、家族が増えたとき懐かなかったり攻撃したりする。また、集合住宅では留守中や玄関周りの音に過剰に反応し吠え声でトラブルになる。極端な例では、誰かに譲ることもできず保健所で殺処分となる。
2) ケガや病気で動物病院に訪れるが、恐怖でパニックになったり、飼い主の抑制も聞かないほど興奮して思うような治療ができないことがある。入院が必要な状態であっても、環境の変化によるストレスによって思うような治療成果が得られない。
3) 甘えを容認してしまったり、あるいは根負けしてしまうことで、犬の望む食事内容になってしまう。結果的に病気を招き、また病中の食事制限や食事内容の変更が容易ではなくなる。

飼い主が「犬」という動物の生態や習性を理解せず、まるで人間の赤ちゃんのように至れり尽くせり、蝶よ華よと溺愛する。また、仔犬のかわいさに溺れ、将来設計を考えずに手を出してしまう。そんな行為が結果として、犬の寿命を安易に縮める不幸に陥れ、そして飼い主自らの悲しみをも助長してしまいかねないかもしれません。「買う」金はあっても、「飼う」知恵がない悲しさ。

人間が獲得した、他の生物・動物たちとは圧倒的に違う秀でた能力のひとつに、「予測する」という能力があります。人間はこれまでの実体験や先人の経験を見聞きすることで、高度な予測を立てたり新しい発見をつむいでいくことができます。「飼う」ではなく「買う」ことの満足感、おやつなどの好物や人間用に調理した食事を分別なく与える満足感は、我々が求めるものとしてはいささか予測・想像力に欠けるものではないでしょうか。しかし、この世知辛いご時勢、日常生活において特に喜ばしいことがあるわけでもなく、そばで甘える「この子」の喜ぶ姿を日々の癒しとし、また生きる希望とする気持ちはわかります。年金暮らしにもかかわらず、30着もの衣装をペットのために買い揃え、キロ単位でジャーキーを備蓄し、自らは口にしない(できない)ローストビーフを主食として与える、そんな方々がおられます。どこか履き違えた感はありますが、突き詰めればご本人たちだけの問題ではなく、社会や政治不安といった大きな枠にまで問題が広がっているような気がしてなりません。

ただ寿命の長さからいうと、ペットたちの最期を見送るのは人間になることが普通です。息を引き取るそのとき、ペットたちがあなたに飼われて幸せでしたと思わせてやれるのか、その想像力を充分に発揮して欲しいと切に願うばかりです。