コラムNo.010 おしっこが出ない! (ネコ編)
動物にもある尿石症 (ネコ編)
「ンナ~グォ、ンナ~グォ…」といつもとはちがう妙な鳴き声で、トイレに出たり入ったりを繰り返す。なんだか苦しそうで、触ろうとするとギャーと怒る。そんなことで病院に駆け込んでくるネコちゃん(の飼主)がいます。しかも、たいていは夜間。年末年始は一応休診でしたが、この時期たまたま同じ病気が集中しました。
これは、尿石症による尿道閉塞です。院内では「尿閉」と呼んでいます。尿石(結石)がおしっこの通り道である尿道(膀胱~外陰部)に詰まって尿の排泄を妨げます。ほとんどの場合、雄ネコです。結石といっても「石」というよりはむしろ「砂」より細かい大きさで、パウダー状といってもよいでしょう。これが尿道で一番細い場所、オチンチンの先端に詰まるんです。完全に詰まってしまったらわずか2日間ほどで死亡してしまう危険な病気なのです。
さて、この「尿閉」ですが、実はこうなる前にシグナルを発することが多いんです。まずは少量で頻回のおしっこ、それと血尿です。いつもきちんとトイレにするのに違う場所でお粗相をしたり、頻繁にトイレに行くのを見かけたら、おしっこの色をチェックしてください。オレンジ色をしていたら何はともあれ病院へ。膀胱炎を起こしている可能性が高いです。尿石が膀胱粘膜を刺激して炎症を起こし、それが尿意をもよおしたりおしっこに血が混じったりする原因になるからです。最近はトイレ用の砂がいろいろありおしっこの色を正確に確認するのはなかなか難しいことがあります。しかも、トイレは外で済ませる場合はなおさらです。
それではなぜ尿石ができるのでしょう。おしっこのなかには尿素をはじめ、ナトリウム、カリウム、塩素、アンモニア、リン酸、カルシウム、マグネシウムなど多くの成分が含まれており、それらが結晶化して尿石を形成しています。はっきりとした原因はわかっていませんが、考えられるいくつかの要因が挙げられています。まずキャットフードで、ミネラルの調整がされてない市販の一般食の常用です。体内で必要とする量以上の過剰なミネラル、特にマグネシウムとリン酸が尿中で結晶化した「ストルバイト」は、この病気でよく見られます。最近は「低マグネシウム」をうたった製品もいくつか出てるようです。他にも細菌やウイルスによる感染、肥満、運動不足、水分摂取量の不足なども問題とされています。
早期発見がネコちゃん自身にもっとも負担をかけません。おしっこの回数と色はときどきチェックしましょう。気になるようでしたらとりあえず病院へ。その際、おしっこを持参すると診断が早くつきます。ただし、なるべく新しく混じりけのない状態のものが必要です。