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コラムNo.015 歯を守ろう(その1)

コラムNo.015 歯を守ろう(その1)

好きだけど近寄らないで?!

毎朝枕元まで起こしにくるペットたちは、寝顔にペロペロとごあいさつ。当のご主人は爽快な朝とは裏腹に、ただならぬ口臭でお目覚めです。抱っこはしても、お願いだから顔を向けないでと言わんばかりにペットから顔を遠ざけるなんてことも。イヌやネコを問わず、このような経験のある方は多いのではないでしょうか。

現在、ペットの口腔内疾患(特に歯周病)は、肥満の次に多い疾患であるといわれています。ペットの人との密接な生活に伴う食習慣や長寿化などといった様々な要因によって、口腔内疾患は増加し続けています。比較的軽視されやすい病気ですが、口腔内疾患以外にも心臓病や肝臓病の原因になることもあります。

飼主さんがときどき診察室で、「うちの子、いっぱい虫歯ができて臭いんですよ。こんなに黄色くなっちゃって。」と言うことがあります。イヌやネコは、まずほとんど虫歯になることがありません。虫歯とは、虫が食べたように歯が黒く傷み欠けていく現象を起こした歯のことですが、肉食獣には普通みられません。

我々人の口腔内には、ミュータンス菌という細菌が常在しています。ミュータンス菌は炭水化物(ご飯、パン、イモ類やお菓子の糖分)から酸を産生するため、この酸がまず歯の表面を侵食し歯を蝕む突破口をつくります。次に異なる種類の細菌が産生するタンパク分解酵素が、その突破口からさらに歯の破壊を進めます。それがいわゆる虫歯の状態となります。本来、イヌやネコなどの肉食獣は、炭水化物を多く摂取しないためミュータンス菌は常在していませんでした。しかし、人とともに生活することによって、人からミュータンス菌をうつされたと考えられています。人の箸をつけたものや口移しによって食べ物から、ときにはキスからうつされたのではないでしょうか。動物は生まれたときには、このミュータンス菌を持っていません。人の赤ちゃんについても、母親や家族からミュータンス菌をうつされることが知られています。

愛情表現において濃密な接触は、ときに人間界の病で動物たちを苦しめる結果になりかねませんし、逆に動物から人間にうつる病気もいくつかあります。口移しや一緒に寝る行為は慎むべきでしょう。

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